すっかり更新をサボってしまいました、なにせ、2ヶ月近く更新していませんでしたからww
死んだわけではないので、またボチボチとアップして参ります。
さて、このブログで最も閲覧件数の多いテーマは、やはりバイオマス発電です。この1月末で全国で100件を超す発電の計画があるそうですが、これはひとえにFITの売電単価がインセンティブとなって、林業関係者、ボイラーメーカー、電力事業者、そして競合関係にある製紙や合板業界など、川上から川下まで様々な分野の方が興味を持ち、場合によっては参入の機会を伺っているからだと思われます。
今回は、FIT対応のバイオマス発電所の収支はどうなっているのか、入手した資料をもとに具体的に整理してみたいと思います。そうすれば、FITによるバイオマス発電という取組みを客観的に評価することができる、と考えたからです。発電所の収支計算は難しいものなのかと思っていましたが、整理してみると理解することができました。なお、具体的な事業体名は公表できませんのでご了承ください。
まず、想定する発電所の規模は、典型的な5MWクラスとします。また、今回は燃料として、購入によるものと、自社工場の端材チップとが半々の場合を想定してみます。
■発電出力 5,800kW(うち、施設内利用800kW)
■ボイラー形式 流動層ボイラー
■実際蒸発量 28,000kg/h(ボイラー出力17,500kW相当)
■蒸気タービン形式 抽気復水タービン
■建設費 3,000,000千円(30億円) ・・・ボイラーから発電施設まで一式
■木質バイオマス使用量 80,000トン/年(うち、自社チップ40,000トン/年)
前提条件として、次のような単価等を設定します。
■売電単価 32円/Kwh(未利用木材) 24円/Kwh(一般木材)
■稼働日数 360日/年
■発電量 36,000,000Kwh ・・・5,000kW×24h×300日(実質年間稼働率83%)
■原木単価 6,000円/トン(未利用木材・購入) 0円/トン(一般木材・自社)
※自社分の一般木材も、実際は運賃等の経費がかかるが、ここでは計算を単純にする
■従業員数 10名×360日
以上の条件で収支を計算します。
■収益(売電のみ)
32円/kWh×18,000,000kWh=576,000千円
24円/kWh×18,000,000kWh=432,000千円
(合計)約1,008,000千円 ・・・約10億円
■支出
燃料費 240,000千円 ・・・6,000円/トン×40,000トン
機械経費 98,000千円 ・・・当初の見積額
資材経費 363,000千円 ・・・当初の見積額
維持管理費 119,000千円 ・・・当初の見積額
人件費 54,000千円 ・・・15千円×10人×360日
減価償却費 100,000千円 ・・・建設費3,000,000千円/15年償却、補助金で1/2圧縮
(合計)974,000千円
■収支
34,000千円 ・・・1,008,000千円-974,000千円
以上、丸めた数字になりますが、およそこんな感じみたいです。ここで注目すべき点は、
1)自社工場からのチップ供給は極めて有利であること。大型の製材工場・集成材工場の場合、木材乾燥などに熱利用しても、自社工場から発生する端材チップは余る。このチップはこれまで、遠方の製紙工場に販売していたが、単価は高くないため運賃程度にしかならず、儲からない部門だった。これが24円/kWhに化けるのはオイシイ話。
2)機械経費、資材経費、維持管理費がとてつもなく高額であること。燃料費と較べればその大きさが理解できる。たしかにこの金額は当初の見積額なので、実際はこれの7割~8割の金額で契約しているものと推測されるが、それでも高額であることに変わりはない。ざっくり、売電収益の半分は持っていかれる、といった感覚だ。
3)その一方で、燃料費は収益の2割強とさほど大きくないこと。年間4万トンといえば相当なボリュームだが、このために、大勢の素材生産事業体が必死になってバイオマス材を供給してもこの程度なのである。
4)人件費や減価償却費も大きなものではないこと。30億円の設備投資も補助金が半分入れば、15年償却とすると年間1億年程度。なお、FITは20年の売電価格保証だが、この場合リスクを見て15年償却としている。
・・・計算していたら、なんだか殺伐とした気分になってきました。バイオマス発電が地域の森林資源活用の切り札のように言われつつ、その実態は、バイオマスの代金をはるかに上回る金額が中央のボイラーメーカー、タービンメーカーに毎年持っていかれる、これが現実なんだ。。。
こうして、多額の補助金まで投入して生み出された電気も、その売電単価はグリッドパリティ(※注)とは隔たりがあり、しかもこうした収支構造では、将来的にも単価の引き下げは難しいと言わざるを得ません。引き下げのためには、現在は捨てている熱も商品化し、電・熱併用で収益性を確保するなど、根本的にその収支構造を変えなければならないでしょう。
とはいえ、5MWクラスの発電施設ともなると、その発生する熱量は膨大なものがあり、他の木材産業とコンビナート化するなど工夫しないと熱の利用が難しいことも、また事実です。
国民だれしも、電気料金が値上げされることさえ無ければ、自然エネルギーの普及に異議を唱える人はいないハズです。しかし、単価の下がる見込みの無い自然エネルギーを、多額の補助金まで投入して見境無く推し進めれば、およそ全ての国民から大変な反発を食らうことになるのではないか?このとき、林業関係者までもが悪者扱いされるのではないか?そんな怖い思いがしてきましたww
今回は、購入と自社チップが半々の場合を想定してみましたが、次回は全量買取りの場合を想定して計算し、さらに考察を進めます。
※注:日本のNEDOは、家庭用電力並み(日本において23円/kWh)になることを第一段階グリッドパリティ、業務用電力並(同14円/kWh)になることを第二段階グリッドパリティ、汎用電源並(同7円/kWh)になることを第三段階グリッドパリティと定義している。
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