木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年12月21日日曜日

木質ガス化コジェネレーションを見学しました(その2)

前回に引き続き、ドイツSpanner社製の木質ガス化コジェネレーションに供給する、燃料チップの水分管理のお話です。

と、その前にドイツといえば先日、エネルギー関連で注目すべきニュースがありましたね。

■ドイツ最大のエネルギー企業はなぜ「解体」されるのか
~エネ業界最大手が原子力・火力から事実上の「撤退」~
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20141208/274831/?P=1

ドイツ最大手のエネルギー企業「エーオン」が、原子力や石炭火力発電から撤退して、自然エネルギーに注力するそうです。ドイツはエネルギーの民主化が進んでいるのですね。とはいえ、自分の目で確かめてみないことには何とも言えない、行ってみたいですねぇドイツやオーストリア。。。


さて、木質バイオマス利用では、大なり小なりその水分管理が課題となるわけですが、今回見学したガス化コジェネともなると水分管理はよりシビアで、仕様によると、適合するチップの含水率(乾量基準)は最大13%、水分(湿量基準)で12%ということになっています。

先にお話したとおり、天然乾燥を十分行った木材の含水率、いわゆる平衡含水率は日本の場合、屋外で15%程度と言われています。つまり、カラッカラに乾いた薪で15%ということですから、これ以上乾燥させるためには、何らかの人工的な乾燥を行う必要があります。あるいは、人工乾燥された製材品やラミナの端材をチップ化する方法も考えられますが、入手は難しいでしょう。

ところでガス化発電の場合、なぜこのような乾燥が必要かというと、高含水のバイオマスをそのまま用いればガス化反応温度が低下し、ガス化反応性の低下およびタール生成量の増加を招くためである、とされています。自分も、ガス化と水分の関係については知識が乏しいのですが、いずれにせよ、人工的な乾燥にエネルギーを使いすぎては、チップ供給からコジェネまでのトータルで見た場合、実質的に得られるエネルギーが目減りしてしまいます。チップの人工乾燥には、自然エネルギーや余剰熱を上手に活用したシステムが求められるでしょう。

現在のところ、このような低含水率の乾燥チップを供給する事業体を国内で求めるのは難しいところです。そのため見学した施設では、自前でチップを乾燥するためハウス等の施設を整備し、この問題に対応していました。
購入している燃料チップは、10トントラックで搬入されてくるそうです。ここからは見えませんが、ハウスの奥にコジェネ装置が隣接しています。ハウスの左右にチップが分けられていますが、これは通路という意味でななく、、、
ハウスの左右にはトンネルがあって、このトンネルから吹き出す温風がチップの間を通ってチップを乾燥させる仕組みです。送風ファンの前に放熱器(ラジエーター)があり、ここにコジェネからの余剰熱が通るようになっています。もちろんハウスの中ですから、ハウス内で暖められた空気の熱も利用できることになります。

ちなみにこの施設では、熱は暖房・給湯に使っても余ってしまい、他の施設に熱を供給することも無いので、このような形で熱を利用しても差し支え無いとのこと。ただし、冬場になると乾燥する熱が不足気味になるようです。
納入されたチップは、一般的な製紙用の切削タイプで、樹皮を含まない白チップでした。搬入したてのものなので、触った感じでもかなり湿っています。
ハウスで乾燥したチップはコジェネ装置の上にあるサイロに蓄えられます。ハウスからサイロへはダクトで風送しています。
サイロの底にあるチップをかき集めるアーム。これが回転することで、チップを搬送スクリューに落とし込むようになっています。
サイロにもコジェネからの温風を吹き出す設計になっていました。やはり、チップの水分管理には相当気を使っているようです。

ところでドイツ本国でも、コジェネを運用する側がこうしたチップの水分管理を行っているのでしょうか?施工した技術者に尋ねたところ、ドイツではこれまでのチップボイラー普及の歴史があり、乾燥したチップは熱量単価で評価されるので供給側のインセンティブとなり、運用する側でここまで対応する必要は無いとのことでした。ちなみに乾燥には、ソーラー熱を利用したサイロが利用されているとのこと。日本では日比谷アメニスさんが「ソーラードライシステム」として取組みをされていますね。
確かにこれならエネルギーを無駄にすることはありませんが、乾燥にかかる期間や、サイロへの出し入れの経費、そしてこれらが加味されたチップ価格でのコジェネ収支など、さらに掘り下げて検証してみる必要があると感じました。

逆にその技術者からは、「ドイツ人に出来て、日本人に出来ないことなど、無いでしょ!」などと、妙なハッパをかけられましたが、日本は高含水率チップに対応した温水ボイラーが普及しはじめたばかりで、人工的に乾燥したチップが燃料として普及するには、いましばらく時間がかかると思われます。

とはいえこうしたコジェネ施設は、地域自立型の電源としてとても魅力的で、太陽光や風力のように天候に左右されないという強みがあります。また、太陽光や風力では得られない「熱」が十分得られることも強みです。こうした自然エネルギー同士が補いあう形で連携すれば、地域によっては自然エネルギーだけで自立することも夢ではない、そんな想いをさせられた見学会でした。

2014年12月7日日曜日

木質ガス化コジェネレーションを見学しました(その1)

すっかり更新をサボってました。これでもイロイロと忙しくて!

これからも、施設見学や基礎知識を交えながらボチボチと続けて参りますが、今回は、小規模・分散型「木質ガス化コジェネレーション」の見学レポです。
ご存知のとおりコジェネレーションとは、熱源から電力と熱を生産し供給するシステムの総称のことですから、何も木質バイオマスに限った話ではありませんし、大規模なものでは、中国木材鹿島工場に隣接する神之池バイオエネルギー株式会社も、中国木材からのバークや端材で発生した電気と蒸気を、今度は中国木材(及び、近くの飼料工場)に供給しており、これも一種のコジェネレーションであり評価できる取組みでしょう。

木質バイオマス関係の識者の間では以前から、発電のみを評価し熱利用に繋がらない現行FIT法への批判があり、小規模・分散型のコジェネレーションを推進すべき、との意見が聞かれますが、じゃあ、その具体例・成功事例はというと、答えに乏しいのが正直なところかと思います。

ところで、「ガス化発電」というと国内では、木質バイオマスでまともに稼働している施設が、ほぼ見当たらないのが現状ではないでしょうか?しばしば、タール分やカーボン(煤)でガス化装置やガスエンジンが閉塞して不具合が発生、というケースを耳にします。ガス化発電に関して国内では、一種のトラウマのような雰囲気が漂っている感じです。(業者の方、スイマセン!)

ところが、今回見学したドイツ「Spanner(スパナー)社」のガス化コジェネレーションは、ドイツ国内で200台の納入実績、海外も含めると300台近い納入実績があり、さらに業績を伸ばしているとのこと。いずれにせよ、日本国内の現状と違いがありすぎる、その理由は何なのかを知りたくて、日本の納入第1号となる福島県郡山市某所の施設を見学して参りました。


まずは、コジェネレーション施設のスペックからですが、詳しくはこちらのHPをご覧いただくのが早いです。
■エコライフラボ 木質コジェネレーション Woodgas CHP

ざっとスペックを列挙(コピペ)しますと、
名称: エコライフラボWoodgasCHP45
発電能力: 45kW electric
ボイラー能力: 105kW thermal
燃料消費: 45kg/h
年間動作時間: 6000時間
年間燃料消費: 240トン
年間発電量: 15万kWh = 540GJ
年間発熱量: 30万kWh = 1.08TJ
燃料: 自然のままの木質チップ、乾燥済み
形状: 基準G30-G40
含水: 最大13%
細粉割合: 4mm以下最大30%

上記を簡単に訳せば、1kgのチップで1kWhの電力と約2kWhの熱が得られるシステムということになります。この熱効率をざっと計算しますと、含水率(乾量基準)13%=水分(湿量基準)12%チップの低位発熱量は約4kWhですから、エネルギー効率は(1kWh+2kWh)÷4kWh=75%ということになり、発電のみの26%と較べ段違い約3倍の高い効率になる理屈です。要するに、木質バイオマス資源を有効活用していることになりますね。
ただし発電だけを見ると、25%と同程度なのが不思議なところです。

発電能力45kWの規模ですが、一般家庭の年間消費電力を1戸当り4.2MWh/年(4,200kWh/年)程度とすると、45kW☓6000時間÷4200kWh/戸≒64戸分に相当します。
また、ボイラー能力105kWの規模ですが、一般的なFF式石油ストーブの出力は5kW程度ですから21台分に相当しますが、ただしこれは、21台のFFストーブが6000時間(250日)Maxで運転する意味ですから、相当な熱出力があることになります。

実際の運用では、一定時間を運転するとメンテナンスが必要になるため、装置を複数台、場合によっては10台以上並列に接続して、1台がメンテナンス中でも全体として支障なく運用できるようシステムを組むのがベターなのだそうです。そのようなシステムで、ホテルや公共施設の熱・電をまかなうのが、得意とする用途だと思われます。

YouTubuにも紹介ビデオがありました。かなりオモシロイです。
20 Spanner Re² wood cogeneration plants in Latvia

上の写真でお分かりのとおり、装置は配管むき出しで、外観からもおおよそ仕組みが理解できます。Spanner社のHPから図を勝手に拝借してますが、
1)チップは中央の筒に貯められる
2)右側のreformerでチップをガス化する
3)左側のgas-filterでガスを浄化する
4)ガス燃料はオットーサイクル(4サイクル)のエンジンを駆動し発電機を回す
といった流れになります。

ガスエンジンはV型8気筒(排気量は未確認です、スイマセン)の立派なもの、V8といえばF1エンジンのコスワース・DFV、あるいはマッドマックスのV8インターセプター並かよ!ってくらいカッコイイ代物ですが、以前見学した岩手県葛巻町のガス化発電ではV型12気筒のガスエンジンが接続されており、これだとフェラーリ並でさらにカッコ良くてしびれる(笑)、エンジンは求められる出力に応じて多気筒化するのだと思います。
手前の黒い部分がV8のガスエンジン、奥のグレーの箱が発電機です。男の子なので、こういうメカを見ていると楽しくて仕方がありません(笑)

自動車エンジンとの大きな違いを発見しました。それは、熱回収の仕組みです。
赤の点線で囲んだ2つの部分がプレート式の熱交換器で、上がエキゾーストマニホールド(排気ガスの通るパイプ)からの排ガスの熱を、下が冷却水からの熱を、それぞれ回収する仕組みになっているようです。自動車用エンジンの場合その目的は車の動力で、熱は排ガスやラジエーターから捨てるだけ(一部、暖房に使用)ですが、そんなマヌケなことはコジェネ屋はやらない、ということです。

そういえば、ガス化装置の側にも二重管式の熱交換器がついていました。ガス化の際に発生する熱も無駄なく利用するためですが、得られる熱量は、ガス化装置側よりもガスエンジン側から得られるほうが多いそうです。
ちなみに、装置の大きさは下の写真でお分かりになるかと思います。
以上、装置を見て参りましたが、課題は燃料となるチップの含水率だと理解できました。使用に適したチップの含水率(乾量基準)は最大13%となっていますが、天然乾燥を十分行った木材の含水率、いわゆる平衡含水率は屋外で15%程度と言われています。従ってこのシステムは、人工的に乾燥されたチップが必要なのです。

逆に言えば、乾燥チップさえ安定的に供給できれば、化石燃料にも原子力にも頼ること無く、地域で熱・電供給が可能となる理想的なシステムということになります。次回はこのシステムのチップ乾燥について整理してみたいと思います。