木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年4月27日日曜日

燃料チップの熱量単価を算定する

先に燃料チップの価格相場を見て参りましたが、これを羅列しますと、

■全国木材チップ工業連合会
1)燃料用等 11.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M45

■全国リサイクル協会連合会
2)F1(バイオマス証明付き) 7.5~8.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M55
3)F2(バイオマス証明無し) 0.1~1.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M55、C2M55

■岩手県内の小規模温水ボイラー向け事例
4)3,727.5円/㎥(含水率100%以下想定)・・・該当区分:C1M45
5)3,951.15円/㎥(含水率60%以下想定)・・・該当区分:C1M35

さっそくそれぞれの熱量単価(円/MJ)、すなわち、1MJの熱を得るために何円かかるかを計算していきます。


1 単位重量(kg)当りの発熱量
木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまの規格では、発熱量を高位発熱量で評価するようになっていますが、このブログでは、後に他の燃料と熱量単価を比較することを想定し、低位発熱量で計算してみることにします。

上記では、水分が35%、45%、55%のものがありますが、これら燃料チップの発熱量(低位発熱量)の計算式は、
Q = -0.2326M + 17.7
Q : 低位発熱量(MJ/kg)
M : 湿量基準含水率(%)

でしたから、それぞれ、
M35のとき、Q = 9.56MJ/kg
M45のとき、Q = 7.23MJ/kg
M55のとき、Q = 4.91MJ/kg


2 容積を重量に換算
上記の1)~3)は重量が分かっていますが、4)5)の重量が不明です。
聞き取りにより、樹種はカラマツが主体であるということなので、先にお示しした換算表により、

M45(水分45%) → 含水率82%のカラマツチップ ・・・ 約250kg/㎥
M35(水分35%) → 含水率54%のカラマツチップ ・・・ 約200kg/㎥

したがって単価は、
4)3,727.5円/㎥(M45)÷250kg/㎥ = 14.9円/kg
5)3,951.15円/㎥(M35)÷200kg/㎥ = 19.8円/kg


3 燃料チップの熱量単価計算
以上、重量と水分、kg当りの単価がわかれば熱量単価が計算できますが、4)5)は配達料込みの価格であるのに対し、1)~3)には運賃が含まれていないので一律2円/kg(トン当り2,000円の運賃)を加算することにします。

1)チップ工業連合会M45 (11.0円/kg + 2.0円/kg)÷7.23MJ/kg = 1.80円/MJ
2)リサイクル協会F1M55 (8.0円/kg + 2.0円/kg)÷4.91MJ/kg = 2.04円/MJ
3)リサイクル協会F2M55 (1.0円/kg + 2.0円/kg)÷4.91MJ/kg = 0.61円/MJ
4)温水ボイラー向けM45 (14.9円/kg + 0円/kg)÷7.23MJ/kg = 2.06円/MJ
5)温水ボイラー向けM35 (19.8円/kg + 0円/kg)÷9.56MJ/kg = 2.07円/MJ


以上の結果は、あくまで予想される水分に従って算定した熱量単価です。実際には、個々に水分測定してみないことには正確なことは言えませんが、傾向としてはつかめるかと思います。

考察しますと、
・温水ボイラー向けチップの熱量単価は、どちらも2円/MJ程度で公平(というか、そのように逆算している)
・FIT対応(F1)の燃料チップの価格は、温水ボイラー向けの熱量単価と同等(と目される)
・FIT非対応(F2)は安価だが水分管理が不明であり、原料の品質がワンランク下
・チップ工業連合会の1.8円/MJは大規模利用を想定しているので、小規模な温水ボイラー向けは配送込みでやはり2円/MJ程度になるのではないか


さて次に、他の燃料と熱量単価と比較をしてみる予定でしたが、だいぶ長くなったので、次回のお楽しみにしたいと思います。

2014年4月26日土曜日

燃料チップの価格を見る

現状では、種類も相場もまちまちな燃料チップなので、価格をいきなり比較するのも乱暴な話ではありますが、ともあれ実際の相場を見てみます。

といっても、単純にチップの価格を並べただけでは比較にならないので、以前にご紹介した「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまの規格に従い、原料と水分で以下の16区分を意識して調べてみることにします。

1 全国木材チップ工業連合会さまの木材チップ市況
まず、統計数字としても価値の高い、全国木材チップ工業連合会さまが公表されている木材チップ市況を見ていきます。

この市況はもともと製紙用チップの市況を示しておられましたが、最近は燃料用を意識した記述が増えています。この資料の「概況」に目を通すだけでも様々な情報が記述されており、興味深いです。

最新の平成26年3月31日調の岩手の数字を拝見しますと、
■燃料用等 11.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M45

この業界の原料は原木又は製材端材のみで、伐採後にチップ工場でストックされた原木をチップ化しているため、水分が若干低減しおおむねM45相当と考えました。

また、この価格はチップ工場サイロ下価格ですから、実際に使用するためには運賃として、距離にもよりますがトン当り2,000円程度(㎏当り2円程度)を加算する必要があるでしょう。

なお、当連合会さまに加盟している事業体から推測してこのチップは切削チップであり、原料の由来が明らかであるため、必要に応じてFIT法で規定する間伐材等の証明(後述)を添付することが可能と思われます。


2 NPO法人全国木材資源リサイクル協会連合会さまの地域別木質チップ市場価格
次に、全国リサイクル協会連合会さまが公表されている地域別木質チップ市場価格を見ていきます。

こちらの市場価格は、バイオマス発電のFIT対応を強く意識した公表となっており、サーマル用(燃料用)はF1、F2の区分があり、それぞれ、バイオマス証明付きと、証明の無いものを意味しています。

■F1(バイオマス証明付き) 7.5~8.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M55
■F2(バイオマス証明無し) 0.1~1.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M55、C2M55

バイオマス証明とは、FIT法上の燃料の区分のことです。同法では電力の買い取り価格を、
・間伐材等由来の木質バイオマスによるもの(32円/kWh)=上記のF1
・一般木質バイオマス(24円/kWh)=上記のF2
・建設資材廃棄物(13円/kWh)
という3つの調達価格を設定しています。

買い取りされる電気の単価が高値安定であれば、間伐材等の利用インセンティブになる、という政策によるものです。なお、原料の区分について詳しくは、林野庁の「木質バイオマス発電・証明ガイドラインQ&A」をご参照ください。

こうしたFIT法の仕組みや課題については様々な論者に譲るとして、いずれにせよ、証明のある・なしで上記のような価格差がある、ということです。

なお現状として、林地のリサイクルチップは伐採から期間を経ず、その場でチップ化される傾向があるため、ここではM55相当として考えました。ですが今後は、これらに関しても水分管理の仕組みが必要になると考えられます。


3 岩手県内の温水プールでの事例
3点目は、岩手県雫石町にある県営温水プールの事例を見ていきます。

全国的にも知られるこの施設は、平成5年から稼働している施設ですが、3台のチップボイラー(200kW+200kW+100kW)にヒートポンプの組み合わせで、競技用の50mプールと、レジャープールの温水、シャワー等の給湯、及び暖房をまかなっています。

当施設はごく近隣に森林組合の製材工場があるため、この工場と燃料チップの単価契約を取り交わし、以降、途切れることなく施設を運営をしてきた実績があります。

また、稼働する当初から燃料チップの熱量単価に着目し、チップの含水率(乾量基準)で80%をしきい値として高含水率チップと低含水率チップで価格差を設けることで、チップ供給側の含水率管理を促すとともに、ボイラーの円滑な運用にもつながるという意味で、非常に評価できる仕組みを取り入れています。

その単価は聞き取りになりますが、
■3,727.5円/㎥(含水率100%以下想定)・・・該当区分:C1M45
■3,951.15円/㎥(含水率60%以下想定)・・・該当区分:C1M35

この金額は配達料込みの単価です。なんだか、ずいぶん細かい数字ですね。
ちなみに、現在納入されているチップは、ほとんどが含水率60%程度の水分管理がされたチップだそうです。これは、丸太で一定期間を経てから製材し、端材をチップ化しているためで、同じ丸太でも期間を経ることによって燃料としての価格が上がるということです。

なお、チップを納入する際にこの施設では、先にご紹介した容積重量の換算表を用いて含水率の確認を行っています。最寄りの製材所でありチップの原料となる樹種も明らかなので、この方法で問題なく運用が可能です。
当施設については、おってこのブログでもチップボイラーの事例として詳しくご紹介していきたいと思います。


以上、燃料チップの単価を並べてみましたが、次回はこれらの熱量単価を算出し、さらに他の石油系燃料等を比較してみたいと思います。

2014年4月20日日曜日

燃料チップの規格まとめ

今回は、これまで見てきた燃料チップの規格のまとめの意味で、規格が策定された背景、及び規格を普及させるための課題について整理してみたいと思います。


1 規格が策定された背景

これまで国内で公開された3つの燃料チップの規格を見てきましたが、こうした規格が出てきた背景には、業界のFIT法への対応があると思われます。

みなさまご存知のとおり、木質バイオマス利用における日本のFIT法の位置付けは、もっぱら発電事業に的を絞った政策誘導です。バイオマス発電は石炭等の発電施設と比べ小規模ですから、同じ蒸気タービンによる発電方式(ランキンサイクル)を採る限り、一般的に小規模なものほど発電効率は悪くなり、発電した電力量が発生した熱量の20%を下回ることも珍しくないそうです。

ですから、余った(大気中に放出される)熱を何らかの形で利用すべきなのですが、熱は自由に遠くまで運べないため、その需要先の確保が課題となります。

このように、課題の残る現行のFIT法ではありますが、なにしろ使用する木質バイオマスの量が大きく、例えば、木質バイオマスで典型的な5,000kWクラスの発電所が使用する燃料チップは年間7~8万トン、丸太換算で10万㎥にもなるとされています。
岩手県内の年間素材生産量が120万㎥程度ですから、発電所が1箇所稼働するだけで岩手県内の素材生産量の1割近い需要が出現し、しかも、FIT法により価格も保証されているとなれば、チップ供給事業体も本気になろうというものです。

木質バイオマス利用も、温水ボイラーの熱利用が中心だった頃は燃料チップ規格化の話もなかなか前に進みませんでした。なにせ、1箇所当りの需要量がたかだか百トン程度では、1万円/トンとしても燃料の販売代金は年間百万円にしかなりません。小さな需要も数がまとまれば大きな需要になりますが、そうなるまでには、需要が先か供給が先か、いわゆる卵とニワトリの関係がいつまでも続くことになります。

FIT対応により供給サイドの体制が整備されていいき、同時に燃料チップの規格が浸透していくことで、小規模ボイラー向けの燃料チップも納入しやすくなることが期待されます。


2 規格を普及させるための課題

今後、スタンダードとなることが予想される「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまの規格を拝見しますと、品質項目は、
1)原料、2)チップの種類、3)チップの寸法、4)水分、5)高位発熱量、6)灰分、7)かさ密度、8)窒素硫黄塩素、9)重金属類、10)異物
の10項目を表示することになっています。

このうち、1)原料、2)チップの種類、3)チップの寸法、7)かさ密度、については、チップを納入する都度調べることが可能であり、調べ方も比較的容易です。

また、6)灰分、8)窒素硫黄塩素、9)重金属類、10)異物については、製造のロットごとに検査することになると思われる項目です。

いっぽう、5)高位発熱量は、4)水分に従って変化するものであり、発熱量は燃料チップ性能の根本であって、水分はボイラーとのマッチングも問われる項目ですから、製造ロットごとではなくチップを納入する都度調べる必要があると考えられます。

燃料チップの価値は、単位熱量当りの金額、すなわち熱量単価で評価することができます。
いま、水分35%(乾量基準54%)のチップが3,500円/㎥で入手でき、チップ1㎥の重さが250㎏だったとします。
水分35%の木材の低位発熱量は(こちらをご参照ください)、
  -0.2326 ☓ 35 + 17.7 = 9.56(MJ/㎏) = 2,287(kcal/㎏) = 2.66(kWh/㎏)
したがって、この1㎥のチップの低位発熱量の総量は、
  9.56MJ/㎏ ☓ 250㎏ = 2,390MJ = 572Mcal = 665kWh
この1㎥の燃料チップが3,500円なので、
  3,500円/㎥ ÷ 2,390MJ/㎥ = 1.46円/MJ = 6.12円/Mcal = 5.26円/kWh
となり、この円/MJ(あるいは、円/Mcalや円/kWh)の値が熱量単価です。つまり、1MJの熱を得るために何円かかるかを示しているわけで、この値が小さいほどランニングコストが安上がりになります。

もし、燃料チップを供給する側がチップの水分を下げる取組みを行ったとします。すると当然、チップの重量は軽くなるわけですが、ボイラーを使用する側が単価を一律に10,000円/トンと決めていたとすると、供給する側の取組みはムダになり、より良い燃料チップ供給の取組みは進展しません。

「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまの規格を見ても、原料で4区分、水分で4段階の区分がされています。単位重量当りでも、あるいは単位容積当りで見ても、水分によって得られる熱量に違いがあるわけですから、今後、燃料チップの取り引きが一般化すれば、原料4区分☓水分4段階=16種類の単価があってもおかしくないと思います。

ただし、ここでは問題があって、それは先にお話したとおり、燃料チップの水分をその場で迅速に把握することが難しいということです。水分は燃料チップの熱量単価に直結する因子ですから、この水分を正しく把握し評価することではじめて、需要と供給のフェアな取り引きが成立するものと考えます。

燃料チップの規格を普及させるためには、チップの水分を迅速に測定する手段がぜひとも必要です。計測機器メーカーさまのご尽力に期待したいところです。


さて、今回はランニングコストと熱量単価の話が出てまいりました。そこで次回は、燃料チップの相場を見ながら、他の石油等の燃料と熱量単価の比較をしてみたいと思います。

2014年4月19日土曜日

燃料チップの規格その3 木質バイオマスエネルギー利用推進協議会さま

燃料チップの規格その3は、「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまが公表された規格を見ていきます。

「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」は、木質バイオマスの利用にかかわる事業者や関係者を広く網羅し、2012年の7月に発足した新しい組織体です。その狙いとするところは、情報の共有と意見交換を通して、木質バイオマスのエネルギー利用を総合的・戦略的に推進することである、としています。いわば、「業界」の意見集約を行う組織体ですね。

会長には筑波大学名誉教授の熊崎実氏を据えるほか、チップの供給サイドからは「全国木材チップ工業連合会」と「全国木材資源リサイクル協会連合会」の双方の関係者が、さらに大手木材企業やボイラーメーカー、シンクタンクやコンサル会社も名を連ねるほか、技術面では岩手大学名誉教授の沢辺攻氏が幹事となるなど、今日の業界を網羅した錚々たる構成員となっています。

ちなみに、熊崎実氏と沢辺攻氏の共著による「木質資源とことん活用読本」は、木質バイオマス利用の技術面をわかりやすく整理した書籍として現在もっとも優れたものといって良いでしょう。この本をご購入いただければ、もう、このブログを見る必要はありませんねww

利用推進協議会さまの燃料用木質チップの品質規格は、2014年3月14日に開催された『木質バイオマスエネルギー利用推進セミナー』の報告会資料の中にあり、同日に公表されたものとされ、以下の表のとおり10項目にわたる規格となっています。
策定に際しては、「全国木材資源リサイクル協会連合会」、「全国木材チップ工業連合会」および「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」の三者により策定されたとしていますが、おそらくは、燃料用チップの欧州規格を横目で睨みながら、リサイクル協会連合会及びチップ工業連合会の双方に配慮しながら調整を行ったものと推測されます。
要するに、欧州規格に準拠している部分が多く見られる、ということですが、しかしこれは、今後も欧州先進国から多くを学ばなければならない我々にとって、賢明なことであると言えるでしょう。

なお、燃料用チップの欧州規格は、トモエテクノさまのこちら(和訳)、もしくはこちらの10ページ目(Table 8. Specification of wood chips for non-industrial use.)に掲載されています。ちなみに、「non-industrial use」とは、パーティクルボードなどのマテリアル利用ではない、という意味です。

このブログでは、規格の内容を再掲することはいたしませんので、ぜひ、利用推進協議会さまの規格と、欧州規格とをプリントアウトし、見比べることをオススメいたします。

さて、利用推進協議会さまの規格の特徴としては、
1)原料をClass1からClass4まで4区分し、無垢材からリサイクル材まで幅広く含める
2)その原料区分ごとに必要な品質項目(チップの寸法や水分、異物の混入など)を規定
3)Class1からClass4に数字が上がるにつれて品質がラフ
4)リサイクル材が含まれるClass3及び4には異物の基準が設けられている
といったところでしょうか。

以上のことから大雑把に言って、Class1は小規模温水ボイラー向け、Class2は中規模温水ボイラー又は小規模蒸気ボイラー向け、Class3は産業用蒸気ボイラー及び一部発電向け、Class4は発電向け、といった区分となり、あとは、ボイラーメーカーの仕様に従って適合したサイズや水分が指定される、といった使われ方になるでしょう。


次回は、燃料チップ規格のまとめを行い、その意義と課題、今後の展望を整理してみたいと思います。

2014年4月13日日曜日

燃料チップの規格その2 全国木材資源リサイクル協会連合会さま

前回に引き続き今回は、「全国木材資源リサイクル協会連合会」さまの「木質リサイクルチップの品質規格」を見ていきます。
http://www.woodrecycle.gr.jp/pdf/hinshitukikaku.pdf

規格の公表は平成22年12月15日、6項目にわたる規格となっています。
なお、「全国木材資源リサイクル協会連合会」さまの規格は、燃料チップ(サーマル)だけでなく、各種マテリアル利用が含まれていますので、以下にはサーマルに関わる部分だけを抽出しました。

1)木質リサイクルチップの加工別による形状の種類
・切削チップ : 主に機械的に刃物で切削したもの。形状はおおよそ四角形のフレーク状の削片。
・破砕チップ : 主にハンマークラッシャーなどの機械的な打撃により木質の繊維に沿って砕いたもの。形状はおおよそ細長いピン状の木片。ピンチップ、クラッシャーチップともいう。
※これ以降、木質リサイクルチップにおいて表記の無いものは破砕チップをいう

2)木質リサイクルチップの品質基準
・A チップ(切削チップ含む) : 柱、梁材および幹材等の断面積の大きいもの、無垢材(防腐剤、合板、ペンキ付着物、金属、プラスチック類、土砂等の全ての異物、または樹皮を含まないこと)
・B チップ(切削チップ含む) : A チップと同様およびパレット、梱包材、解体材等の無垢材で比較的断面積の大きいもの(防腐剤、合板、ペンキ付着物、金属、プラスチック類、土砂等の全ての異物を含まないこと)
・C チップ : B チップと同様および合板等(防腐剤、ペンキ付着物、金属、プラスチック類、土砂等の異物を含まないこと)
・D チップ : C チップと同様および繊維板、ペンキ、接着剤等の付着したものなど(襖、障子等を含む。)、または枝、除根材等(CCA含有物、金属、プラスチック類、土砂等の異物を基本的に含まないこと)
・Eチップ : チップ製造の際の副産物(有害物質、金属を含まないこと)

3)木質リサイクルチップの利用用途標準
燃料チップ(サーマル)用途として、上記のA・B・C・Dは○だが、Eは△

4)製造における留意点
・チップサイズ : 切削チップは各ユーザーの受入れ基準に準ずる、A~Dの破砕チップは長辺 50mm以下(但しA、B チップは 5mm 以下を除く)、Eチップは5mm以下
・含水率 : サーマルは25%までとし、これを超えるものは協議が必要
CCA処理材は使用不可
・畳、草葉、腐朽材は基本的に使用不可(用途により利用する場合有り)
・土砂等も使用不可(目視等により判別)

5)再資源化施設において明らかにする項目を以下のとおりとする
(ア)木くずの種類ごとの保管施設の容量、屋根の有無
(イ)破砕機の仕様、原動機の出力(kw)、破砕能力(t/h)
(ウ)生産工程での異物除去の方法(手選別、磁選機および金属探知機の有無)
(エ)破砕機本体のスクリーンおよび篩機のスクリーンの仕様と有無
(オ)製品のストックヤードの保管容量、屋根の有無

6)品質試験(含有量試験・性状試験)
・必須試験項目 : サイズ、全水分、発熱量、灰分、塩素分
・その他試験 : 重金属項目については、利用目的、ユーザー等の要求により実施する場合がある


「全国木材資源リサイクル協会連合会」さまの規格の特徴としては、
1)あらゆる木質系の資源を活用する方向
2)チップの標準形態は破砕チップ
3)木質以外の不純物によって5段階の品質区分、燃料に適さない物も
4)あらかじめチップ供給者が施設の情報公開を行う
5)あらかじめチップ供給者が品質試験を行う
といったところでしょうか。

なお、上記のCCA処理材とは、かつて木造住宅のシロアリ防除のため用いられていた「クロム銅ヒ素系木材保存剤」クロム (Cr)・銅 (Cu)・ヒ素 (As) のことです。環境汚染の可能性があるため現在はほとんど使用されていませんが、解体家屋の土台材などに使用されているおそれがあるため、燃料チップとしての利用は難あり、としています。


さて、2つの業界の規格を見てきましたが、できれば1つの規格にまとまったほうが利用する側にとって有益です。次回はこうした1本化の動きを見ながら、規格について考察してみたいと思います。

2014年4月12日土曜日

燃料チップの規格その1 全国木材チップ工業連合会さま

これまで、燃料チップの種類、形状、水分といった様々なファクター(品質に求められる要素)を見てきました。ファクターをまとめると「規格」となります。規格はいわば、燃料チップの供給サイドと、ボイラー利用者などの需要サイドの橋渡し役です。

現行の燃料チップの規格について今回から3回に分けてご紹介し、最後に比較をしてみたいと思いいます。というのも現在、燃料チップには公表されているもので2つの規格が、さらに公表へ向けて調整中の規格もあるからです。

公表中のひとつは、「全国木材チップ工業連合会」さまのもの、もうひとつはNPO法人「全国木材資源リサイクル協会連合会」さまのものです。
そして、検討中のものは、こうした規格を統合する形で「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまがとりまとめ中のものです。

おおざっぱに言って、「全国木材チップ工業連合会」さまは製紙用チップ供給を生業とする事業体の団体、「全国木材資源リサイクル協会連合会」さまは様々な木質資源のリサイクル利用を生業とする事業体の団体です。
そのため、その性格に応じた規格の考え方・捉え方に違いがあります。どちらが良い・悪いということではありません。


今回見ていくのは、「全国木材チップ工業連合会」さまの「木材チップ品質規格規程」になります。
http://zmchip.com/

規格の公表は平成24年5月23日、以下、5項目にわたる規格となっています。

1)樹種
①針葉樹チップを主体とするもの・・・ N
②広葉樹チップを主体とするもの・・・ L  
③針葉樹、広葉樹等混合チップを主体とするもの・・・ M

2)製造方法
①切削 (刃物で切削したもの)… S スクエアチップ
②打撃、破砕 (ハンマー、クラッシャーなどで木質繊維に沿って砕いたもの)… H ピンチップ、クラッシャーチップ

3)樹皮
①皮無し (白チップ) ・・・ 皮混入率1%以下 Bw
②皮付き (黒チップ) ・・・ 皮混入率20%以下 Bb
③樹皮チップ ・・・ 粉砕した樹皮を主体とするもの Ba

4)乾燥
乾燥程度〈湿量基準の含水率)で4区分する
D1 (20%未満) 
D2 (20%以上、30%未満)
D3 (30%以上、50%未満)
D4 (50%以上)
 
5)異物
金属、プラスチック、土砂など異物を含まないもの

※記号表示例
スギ、切削、皮無し、未乾燥、のチップ   … NスギSBwD4
広葉樹、破砕、皮付き、乾燥、のチップ   … LHBbD1


「全国木材チップ工業連合会」さまの規格の特徴としては、
1)原料はまじりっけの無い木材のみで異物は認めず
2)チップの大きさに規定が無い
3)樹皮の有無は原料の種類による3区分(皮を剥いた丸太、全木、樹皮のみ)
4)水分は湿量基準で4区分
といったところでしょうか。

推測するに、製紙用チップの規格に水分の項目をプラスしたような規格であると言えます。確かに、原料をピュアな木材だけに限定すれば、難しいことを言わずとも、こうした簡単な規格で事足りるのだと思います。


次回は、「全国木材資源リサイクル協会連合会」さまの規格を見ていきます。

2014年4月6日日曜日

チップの水分を調べるには?

これまでさんざん、水分水分と言い続けてきましたが、では、チップの水分はどうやって測定すれば良いのでしょうか?

一般的な木材(板とか角材とか)の場合は通常、電気抵抗式、又は高周波式の含水率計が用いられます。
電気抵抗式(左)と高周波式の木材含水率計
電気抵抗式は木材に針(電極)を刺してその抵抗値で含水率を測定します。高周波式は木材に高周波を当てその変化で含水率を測定します。

どちらもチップの水分測定には使用できません。電気抵抗式はあたりまえですが、高周波式の場合もチップの間には空隙があるので、その空気を測ることになってしまうからです。

余談ですが、高周波式の含水率計を使用する場合、薄い板を測定するとやはり空気を測ることになるため注意が必要です。下の「測定上の注意」の機種の場合、測定範囲は厚さ1~4㎝の範囲となっています。薄い板は所定の厚さになるよう重ねてから測定します。

では、チップの水分測定の方法ですが、実は、迅速、正確、安価といった全ての条件を満足する測定方法が無いのが実情です。主な測定方法を列挙しますと、

1)温度をかけてチップの水分を飛ばし重量変化を測定 ・・・製紙会社の方法
2)ポータブルな加熱乾燥式水分計を用いる方法 ・・・ボイラーメーカーさんは現在これ
3)容積重量の換算表を作っておく ・・・小規模ボイラー施設が用いている方法
4)チップ専用の水分計を用いる ・・・現在のところ測定器は輸入品のみ

以下、個々に見ていきます。


1)温度をかけてチップの水分を飛ばし重量変化を測定
製紙会社さんが一般的に用いている方法です。製紙会社では、チップの検収(納入時の検査)をする際トラックごとに1㎏程度のサンプルを採取し、オーバーサイズ・ダスト・バークといった欠点とクリーンチップを分けてそれぞれの重量を測定した後、105℃程度で8~9時間乾燥(JIS Z 2101又はJIS Z 7302-3に準拠した方法)してチップを絶乾状態にし、その重量差で水分を測定しています。

チップを運搬してきたトラックは、製紙会社のトラックスケール(トラックの重さを測定する台貫)に乗ってチップの重量が測定され、チップの代金はトラックごとに、クリーンチップの絶乾重量に応じた金額が支払われます。

余談ですが、製紙会社の方々とお話をすると、しばしば「絶乾トン」という言葉が出てきます。単位はBDt(Bone Dry ton)で、骨まで~♪(城卓矢、わからんか?)というかカラカラの状態だ、という意味なのでしょう。製紙会社は、紙の原料として歩留まりのみを評価する、というわけですね。

この方法の弱点は、まず測定に時間がかかることです。また、重量を測定するトラックスケールを備える必要がありますが、小規模なボイラー施設でトラックスケールを備えることは無理があります。


2)ポータブルな加熱乾燥式水分計を用いる方法
ボイラーメーカーさんがボイラーを設置しテスト運転をする際、よくこれが使われています。
原理は1)と同じで、乾燥用ヒーターの付いた重量計にチップを入れて、乾燥前と後の重量差で水分を測定します。
加熱乾燥式水分計
測定結果は正確です。ただし弱点として、ひょう量(測定する資料の量)が50g程度と小さいため測定がチップ全体に比べ局所的になる可能性があること、ヒーターで水分を飛ばす時間が必要で測定には10分程度かかるため、納入するチップをその場で検収するには難ありです。


3)容積重量の換算表を作っておく
岩手県内の小規模ボイラー施設でしばしば用いられている方法です。
もし、取り引き先のチップ工場又は製材工場がいつも同じで、樹種もはっきりしているのなら、チップの容積当りの換算表を作っておくのが良い方法です。

その方法は、一定容積の容器(例えば10リットルのバケツ)にチップをすり切りで満タンに入れて全体の重量を測定し、その重量から空容器の重量を差し引いてチップの重量を測定します。そのチップの水分を乾燥法で測定し、それの数字を元にチップ重量とチップ水分の換算表を作成します。あとは同じ容器で重量を量ればその表から水分の割合を読みとるわけです。

なお、換算表の作成にあたっては、できれば水分率の違うもので数回、正確な水分測定が必要ですから、それには各県の林業試験場の協力を得ると良いと思います。換算表ができれば、あとは台ばかりだけでOKです。

この方法により、岩手県林業技術センターで作成した換算表がこちらです。参考になるので、以下にも掲載しますね。
※当時のものなので、水分が「乾量基準含水率」表示になっていることにご注意ください。

この方法の弱点は、切削チップと破砕チップの両方を使用したり、あるいは取引先によってチップの形状が異なる場合、それぞれに換算表が必要になることです。また、樹種が混ざった場合も精度があやふやになります。

丸太をチップにした場合、空隙が増えて容積が増しますが、その割合は切削チップの場合2.8倍程度といわれています。1㎥の木材をチップにしたら2.8㎥になる、ということですね。
ただしこれは、チッパーの機種・種類、チップが切削か破砕かによっても異なりますから、上記の岩手県林業技術センターの換算表も目安であって、実測してみないと正確なことは言えません。

また、先にお話したとおり、木材は樹種によって比重が異なりますから、樹種がはっきりしないとこれまた正確なことが言えなくなります。


4)チップ専用の水分計を用いる
もし、チップの水分をその場で即座に測定できるのなら、全て問題は解決します。
調べてみると、欧州のバイオマス先進地では「チップ水分計」が出回っているらしいのです。
オーストリア製のチップ水分計
現物を使用したことが無いので、どの程度の精度が出るのかなど確かなことは言えません。ただし、即時性が極めて高いことは確かでしょう。

弱点は水分計の値段が高いことです。なにしろ、左のhumimeter BLLで25万円、右のhumimeter BM1で50万円と、小規模施設で購入するには無謀な値段になっていますww

左のhumimeter BLLの写真を見ると、金属製のロッドをチップに差し込んでいるので、原理はおそらく電気抵抗式だと思います。同じ原理で国産の牧草水分計は10万円程度、土壌水分計だと3万円しません。単に、輸入の専用機だから高価なのだと思いますが、違うでしょうか?
ここはひとつ、国内の測定機器メーカーさんに、木材チップの含水率を管理できる測定機器の開発を早急に行うことを、お願いしたいと思います。


次回は燃料チップの規格について整理し、その後、熱量と単価について考えてみたいと思います。

2014年4月5日土曜日

燃料チップの種類 破砕チップ

引き続き今回は、破砕チップとバイオマス利用のことを整理していきます。

切削チッパーが木材を刃物でチップ化するのに対し、破砕チッパーは突起状や棍棒状のハンマー(機械メーカーによって差異あり)が文字通り木材を叩き壊すことでチップ化します。従って、チップ形状は繊維方向に細長く裂けた形状になり、また、細かく粉状になった木材の割合も増加します。

前回、長尺チップは搬送装置のトラブルの元になるとお話しましたが、粉状の木材もその割合が多いと、チップが塊になって搬送されない状況いわゆるブリッチが生じやすくなり、粉に水分が多いと冬期間にチップが凍りついてしまうこともあります。

その一方で、切削チッパーがピュアな木材だけをチップ化できるのに対し、破砕チッパーは鉄クギの残った建築廃材から土砂で汚れた枝条まで、切削チッパーが敬遠するような木質原料もチップ化することが可能です。
そのため、原料となる木材が産業廃棄物として処理料を払って引き取られるもの、いわゆる逆有償となるケースもあり、結果的にチップの価格も安価になっています。
製材所の端材          建築廃材
震災ガレキ           林地残材
ただし、一口に破砕チップと言っても、原料によって品質が大きく異なるため注意が必要です。上の写真は、ある事業体が供給する破砕チップを原料別に比較してみたものですが、
1)製材所の端材は樹皮混じりの木材のみで水分はまずまず
2)建築廃材は所々に塗料など見えるものの良く乾燥している
3)震災ガレキは土砂混じりで水分も多い
4)林地残材は不揃いで水分が多い
といった具合で、品質にはかなりの差があることがわかります。

水分管理については、チップ化が解体工事や林地開発などの現場で行われることが多いため、なかなか難しい事情があるようです。いったんチップ化施設まで運び、乾燥期間を経てからチップ化すれば良いのですが、この場合は積み下ろしが2度手間になり、コストアップになりますね。

破砕式のチッパーで有名なのは、俗に「ガラパゴス」と呼ばれるマシンでしょう。正確に言うと、ガラパゴスとは某社の商品名で、岩石を破砕する機種のことを指します。木質系の破砕機は「リフォレ」という商品名で区別されています。
ちなみにリフォレとは、自然の物を自然に帰す「森林再生」の願いを込めて、英語の「reforest(リフォレスト:森林を再生させる)」をもじった造語だそうです。

マシンの処理能力は大きく、移動式の切削チッパーが時間当り2㎥/程度の処理量であるのに対し、20~100㎥/時間とおよそ10倍~50倍の能力があります。
また、内部にフルイ(スクリーン)装置を備え、なるべく長尺チップを出さないよう、チップの大きさを一定にそろえる工夫がされています。
自走式破砕機
けん引式破砕機

余談になりますが、この手のマシンは例の東日本大震災のガレキ処理で大活躍しました。正確な台数はわかりませんが、岩手県でも沿岸地域に相当数のマシンが投入され、処理されたチップの一部は宮古市にあるパーティクルボード工場「宮古ボード工業」に買い取られ、その名も「復興ボード」となって有効活用されるほか、宮城県内の工場のボイラー熱源として、あるいは福島県のボード工場へ、さらに遠くは会津市の「グリーン発電会津」にまで運搬され燃料として活用されました。

破砕チップの特徴及び使用上の注意点をまとめると、
1)チップの形状に留意しボイラーの搬送装置とのマッチングを確認することが必要
2)原料によって水分の差異が大きいためその確認が必要
3)異物混入のリスクはあるものの建築廃材チップは安価なうえに熱量も得られる
4)供給事業体のほとんどが産廃処理業者でありチップの配送が可能なことが多い

発電施設や工場の蒸気ボイラーといった大規模ボイラーの場合、搬送装置も大型になるためチップの形状が問題になることは少なく、また、大規模ボイラーは熱容量が大きいため多少の水分変動も許容されます。そして何より、建築廃材は安価で熱量も得られるため、引く手あまたの建廃チップは枯渇している状況です。

一方、小規模ボイラーでの利用はマッチングに注意する必要があること、林地残材の活用に関しては水分管理の手法を確立していく必要があるでしょう。


さて、これまでずいぶん木質バイオマス利用と水分のことをお話してきました。では、チップの水分を知るには具体的にどうしたら良いのでしょう?次回はそのあたりを整理してみたいと思います。