木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年6月14日土曜日

放射能汚染の「負の連鎖」を断ち切る(その1) 何が起きたのか?

突然ですが、テレビ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』の人気コーナー『DASH村』で、“農業の達人”としてTOKIOの指導役を務められていた三瓶明雄さんが、6月6日朝に急性骨髄性白血病のため亡くなったそうです。享年84。
ご存知のとおり、『DASH村』のあった福島県浪江町は、福島第一原発事故により計画的避難区域となってしまいました。晩年の明雄さんはTOKIOメンバーとともに各地の農業を見て回っておられましたが、テレビ画面からも明雄さんの「故郷に帰りたい」という気持ちは、痛いほど伝わってきたものでした。
故郷を追われ、失意のうちにその生涯を閉じた明雄さん。その胸中をお察し申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈りいたします。


さて今回から、放射能汚染が木質バイオマス利用に及ぼした悪影響と、これを克服するための取り組みを、具体的な事例を見ながら整理してみたいと思います。

具体的とは、いったいなにが起きたのか?図で示すと次のようになります。

事故前は、チップ工場のバークが木質バイオマス燃料として、
バーク(チップ工場) → バークボイラー(再生紙工場) →  灰(セメント工場)
滞りなく流れていたものが、放射性物質の影響により、
1)セメント工場が100Bq/kg以上の灰の受け入れを中止
2)再生紙工場のバークボイラーの灰が8000Bq/kgを超え指定廃棄物
3)バークの汚染が原因と判明、再生紙工場がバークの受け入れを制限
4)受け入れ制限されチップ工場の行き場のないバークが場内に滞留
5)バークの滞留が3000トン(推定)に及び、チップ工場の稼働が危機に陥る
といった「負の連鎖」が生じたものです。
これは、困難に立ち向かう男たちの真実のドラマである。(ちょっとオーバーかな?)


今回はまず、セメント工場と灰のことを整理してみます。

これまで事業所の灰は原則として産業廃棄物となることをお話してきました。ですが、灰にはセメントの基材として活用するという良い方法があります。

木材の焼却灰に限らず、ゴミの焼却灰であっても、焼却灰にはセメント共通の化学成分が含まれています。灰に不足している石灰石(酸化カルシウム源)をたして高温で焼き上げたものが「エコセメント」として一般に流通しています。

ところが福島第一原発事故後に、エコセメントの一部に放射性物質の汚染が認められたため、国土交通省がシュミレーションを行った結果、放射能濃度が1000 Bq/kgのセメントを使用して製造されたコンクリートの床、壁、天井で囲まれた居住空間における被ばく線量は0.36 mSv/年と評価されたそうです。
出典: 福島県内の下水処理副次産物の当面の取扱いに関する考え方について

この値は、前回お話しした1 mSv/年の許容量に比べ1/3程度の小さい値ですが、それでも、その他食品や人為的な他の影響のことを考えるとビミョーな数値といえます。そのため一般社団法人セメント協会は、「セメントの段階でクリアランスレベル以下とすることが必要である」とし、会員各社に周知を行いました。
ここで言うクリアランスレベルとは、「セシウム134とセシウム137の放射能濃度の和が100Bq/kgである」としています。これにより、国内のセメント工場は100Bq/kg以上の灰の受け入れを中止しました。
出典:放射性物質が検出された下水汚泥、浄水発生土のセメント原料の利用について

以前に、灰の発生量は、木材の絶乾重量当り、木部では0.2~0.7%、樹皮では2~7%、おおざっぱに、木部で0.5%、樹皮でその10倍」とお話しましたが、バークボイラーの灰が100Bq/kg以下となると、バークの段階で5Bq/kg以下というごく低濃度でないとクリアできないことになり、これでは関東から南東北にかけての樹木でクリアすることはまず不可能でしょう。

100Bq/kg以上の引取り中止を示された再生紙工場は、さっそく自社のバークボイラーから出た灰の放射性物質濃度を測定してみました。すると、驚くべき結果が現れたのです。

次回は、この再生紙工場の苦悩とその対応を追って見ることにします。

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