前回のチップ化コストに引き続き、原木調達から燃料チップ配送までのコストを考えてみることにします。
チップ工場が燃料チップを供給する場合の流れは、
1 原木購入 ⇒ 2 チップ製造 ⇒ 3 配送
となりますが、それぞれの単価を見て参ります。
1 原木購入 ⇒ 2 チップ製造 ⇒ 3 配送
となりますが、それぞれの単価を見て参ります。
1 原木購入
木材は品質に応じて大まかに、A材=製材用、B材=合板用、C材=製紙チップ用などどランク付けされていますが、実際には、その境界線はあいまいなところがあります。
木材は品質に応じて大まかに、A材=製材用、B材=合板用、C材=製紙チップ用などどランク付けされていますが、実際には、その境界線はあいまいなところがあります。
1本の木を、元の太い側からA材、その次にB材というふうに採っていって、曲がり材や細材をC材として活用する、このようにして段階的に余すこと無く活用することが木材利用では大切なことです。これを、木材のカスケード利用などと称しています。
ちなみにカスケード(cascade)は「滝」と訳されますが、英語で滝にはフォール(waterfall)という単語もあります。フォールが一気に落ちる滝であるのに対し、カスケードは階段状に落ちる滑滝(なめたき)を意味するそうです。なるほど、多段階利用というニュアンスで、言い得て妙ですね。
さて、木材の価格を公表しているサイトはいくつかありますが、今回はポータルサイトである「原木需給.com」から木材価格需給動向の素材価格(年計)「素材価格(年計)外材、合板適材、チップ用素材」を見てみます。
ここで、木材チップ用素材価格(単位:1㎥当たり円)針葉樹丸太は、およそ5,000円弱/㎥で推移していることが分かります。
また、最近の聞取りですが、岩手県内の某バイオマス発電事業者の原木丸太買取価格が7,000円/トン(生トン・工場着価格)との情報があり、生丸太1㎥の重さを0.8トンとすると、容積単価は5,600円/㎥相当と推測されます。
近年のバイオマス需要が高まりつつある状況を考慮し、ここでは原木代5,600円/㎥(丸太・チップ工場着価格)としてみることにします。
2 チップ製造
前回、チップ製造のコスト(一般管理費を含まない)は、
前回、チップ製造のコスト(一般管理費を含まない)は、
・減価償却を終えている場合、丸太1㎥当りのチップ化コストは約900円/㎥
・減価償却が新たに発生する場合、丸太1㎥当りのチップ化コストは約1,500円/㎥
としていましたが、事業の永続性を考え、ここでは、チップ化コスト1,500円/㎥(丸太換算)を採用することにします。
3 配送
最後は、燃料チップをボイラー利用者に配送します。
様々な運搬手段が考えられますが、ここでは中小規模のボイラー熱需要者を想定して、4tファームダンプ(いわゆる、深あおりダンプ)で配送することにします。・・・深ダンプとは写真のようなものです。
コストについては、またまた岩手県林業技術センターのお世話になりましょう。こちらの研究成果「燃料用チップ供給コストの試算」(平成18年3月発行)のP5から、4tファームダンプのチップ運搬コストは2,912円/㎥(丸太換算・運搬距離30㎞)最後は、燃料チップをボイラー利用者に配送します。
様々な運搬手段が考えられますが、ここでは中小規模のボイラー熱需要者を想定して、4tファームダンプ(いわゆる、深あおりダンプ)で配送することにします。・・・深ダンプとは写真のようなものです。
ここでは、配送コスト2,900円/㎥(丸太換算)を配送費用としてみることとします。
4 コスト合計・考察
以上、コストを合計しますと、
原木代 5,600円/㎥(丸太・チップ工場着価格)
チップ化 1,500円/㎥(丸太換算)
配送 2,900円/㎥(丸太換算)
(合計) 10,000円/㎥(丸太換算)
・・・配送のほうが、チップ化よりもコストがかかるんですね。
となります。このとき、丸太⇒チップの容積は2.6倍なので、チップ1㎥のコストは、
10,000円/㎥(丸太換算) ÷ 2.6 ≒ 3,846円/㎥(チップ換算)
さて、先に燃料チップの相場をお示ししましたが、ここで、岩手県内の温水プールでの事例ですと、3,951.15円/㎥(チップ換算)となっておりました。この単価は税込み(5%時代)なので、税抜き単価は、3,763円/㎥(チップ換算)となります。
・・・3,846円と比較し、なんと、赤字です(^^;
ただし、温水プールの場合は、
1)一部購入原木もあるが、製材工場の端材を十分に活用
2)チップ化施設は20年以上経っており、減価償却済み
3)チップ工場⇒温水プールまでが至近距離にある
4)大規模な温水プールなので年間通じた一定需要がある
といった条件のもとで、まあなんとか黒字を出している、といった実情かと推測されます。その辺りの実情は、機会をみて現地レポートをしてみたいと思います。
以上のようなことから、燃料チップ供給に取組むにあたっては、1)供給先までの距離が近いこと 2)事業として取組むだけの十分な需要量があること、といった点が大切かと思われます。それでも、じゃんじゃん儲かる、とうわけにはいきませんね(苦笑)
なお、「原木の価格を安くしろ!」というのは、丸太供給に取組む側とすればキビしい話であることはご理解ください。。。
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