木質バイオマス利用に役立つ忘備録です。これは!と思った情報を随時アップして参ります。

2014年4月26日土曜日

燃料チップの価格を見る

現状では、種類も相場もまちまちな燃料チップなので、価格をいきなり比較するのも乱暴な話ではありますが、ともあれ実際の相場を見てみます。

といっても、単純にチップの価格を並べただけでは比較にならないので、以前にご紹介した「木質バイオマスエネルギー利用推進協議会」さまの規格に従い、原料と水分で以下の16区分を意識して調べてみることにします。

1 全国木材チップ工業連合会さまの木材チップ市況
まず、統計数字としても価値の高い、全国木材チップ工業連合会さまが公表されている木材チップ市況を見ていきます。

この市況はもともと製紙用チップの市況を示しておられましたが、最近は燃料用を意識した記述が増えています。この資料の「概況」に目を通すだけでも様々な情報が記述されており、興味深いです。

最新の平成26年3月31日調の岩手の数字を拝見しますと、
■燃料用等 11.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M45

この業界の原料は原木又は製材端材のみで、伐採後にチップ工場でストックされた原木をチップ化しているため、水分が若干低減しおおむねM45相当と考えました。

また、この価格はチップ工場サイロ下価格ですから、実際に使用するためには運賃として、距離にもよりますがトン当り2,000円程度(㎏当り2円程度)を加算する必要があるでしょう。

なお、当連合会さまに加盟している事業体から推測してこのチップは切削チップであり、原料の由来が明らかであるため、必要に応じてFIT法で規定する間伐材等の証明(後述)を添付することが可能と思われます。


2 NPO法人全国木材資源リサイクル協会連合会さまの地域別木質チップ市場価格
次に、全国リサイクル協会連合会さまが公表されている地域別木質チップ市場価格を見ていきます。

こちらの市場価格は、バイオマス発電のFIT対応を強く意識した公表となっており、サーマル用(燃料用)はF1、F2の区分があり、それぞれ、バイオマス証明付きと、証明の無いものを意味しています。

■F1(バイオマス証明付き) 7.5~8.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M55
■F2(バイオマス証明無し) 0.1~1.0円/㎏(生重量)・・・該当区分:C1M55、C2M55

バイオマス証明とは、FIT法上の燃料の区分のことです。同法では電力の買い取り価格を、
・間伐材等由来の木質バイオマスによるもの(32円/kWh)=上記のF1
・一般木質バイオマス(24円/kWh)=上記のF2
・建設資材廃棄物(13円/kWh)
という3つの調達価格を設定しています。

買い取りされる電気の単価が高値安定であれば、間伐材等の利用インセンティブになる、という政策によるものです。なお、原料の区分について詳しくは、林野庁の「木質バイオマス発電・証明ガイドラインQ&A」をご参照ください。

こうしたFIT法の仕組みや課題については様々な論者に譲るとして、いずれにせよ、証明のある・なしで上記のような価格差がある、ということです。

なお現状として、林地のリサイクルチップは伐採から期間を経ず、その場でチップ化される傾向があるため、ここではM55相当として考えました。ですが今後は、これらに関しても水分管理の仕組みが必要になると考えられます。


3 岩手県内の温水プールでの事例
3点目は、岩手県雫石町にある県営温水プールの事例を見ていきます。

全国的にも知られるこの施設は、平成5年から稼働している施設ですが、3台のチップボイラー(200kW+200kW+100kW)にヒートポンプの組み合わせで、競技用の50mプールと、レジャープールの温水、シャワー等の給湯、及び暖房をまかなっています。

当施設はごく近隣に森林組合の製材工場があるため、この工場と燃料チップの単価契約を取り交わし、以降、途切れることなく施設を運営をしてきた実績があります。

また、稼働する当初から燃料チップの熱量単価に着目し、チップの含水率(乾量基準)で80%をしきい値として高含水率チップと低含水率チップで価格差を設けることで、チップ供給側の含水率管理を促すとともに、ボイラーの円滑な運用にもつながるという意味で、非常に評価できる仕組みを取り入れています。

その単価は聞き取りになりますが、
■3,727.5円/㎥(含水率100%以下想定)・・・該当区分:C1M45
■3,951.15円/㎥(含水率60%以下想定)・・・該当区分:C1M35

この金額は配達料込みの単価です。なんだか、ずいぶん細かい数字ですね。
ちなみに、現在納入されているチップは、ほとんどが含水率60%程度の水分管理がされたチップだそうです。これは、丸太で一定期間を経てから製材し、端材をチップ化しているためで、同じ丸太でも期間を経ることによって燃料としての価格が上がるということです。

なお、チップを納入する際にこの施設では、先にご紹介した容積重量の換算表を用いて含水率の確認を行っています。最寄りの製材所でありチップの原料となる樹種も明らかなので、この方法で問題なく運用が可能です。
当施設については、おってこのブログでもチップボイラーの事例として詳しくご紹介していきたいと思います。


以上、燃料チップの単価を並べてみましたが、次回はこれらの熱量単価を算出し、さらに他の石油系燃料等を比較してみたいと思います。

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